2009年2月5日木曜日

【私から見た母】抗がん剤治療開始

腹水が少し出ていた母は、
「奏効率が50%で、腹水があると効きにくい」というセカンド・オピニオンを聞いて、
怖がっているようだった。
主治医からも、「TS1+タキソテール」が体に合わない、または効果が見られない場合は、
副作用が少しきつい抗がん剤での治療になることから、
外来ではなく入院することになるとも説明を受けていたからだと思う。
後々で知ったことだけれど、タキサン系の抗がん剤は腹腔内にとどまりやすく、
腹膜転移に効果が出やすい抗がん剤らしい。

母は、医師から
①1カ月待ちでガンセンターでの抗がん剤治療を受けるか
②ガンセンターの処方箋で、同じ治療を地元の病院でうけるか
という選択肢を与えられた。
母は母自身の弟を胃がんで亡くしているので、
「もしも私が同じような状況になったら、ホスピスにすぐに行きたい」
と言っていた。
だから、
③ホスピスに行く
という選択肢もあったけれど、
母からは「まだあきらめたくない、生きたい」という様子が見えたので、
医師や家族から母に対して③の選択肢は提示しなかった。

母は姉と相談して②を選択した。
ガンセンターのメリットとして
①より専門的な治療が受けられる
②完全看護
があったけど、
①実家からガンセンターは遠いため、家族も支援しにくい
②ガンセンターは全県からガン患者が集まってくるため、長く病院にいられず、結局、別な病院に出される
③同じ処方箋で、地元の病院ですぐに治療を開始できる
と考え、判断をしたという。

私は、母への最初の告知を一緒に聞いただけで、
母の状態を医師から説明を受けることはなかった。
だから、その時はまだ「手術が可能」だと思っていた。
「胃の外側まで広がっている」との母の表現は、「腹膜播種」を意味していたが、
単に胃壁の外側に広がっていて、他の臓器への転移はないと私は捉えていた。
でも、いったん自宅に戻り、近くの本屋さんでガンの本を買って調べると、
腹膜炎を起こした場合は、ガン細胞が腹膜に飛んでいて、多くの場合腹膜播種であることがわかった。
そして、腹膜播種ということは、手術は不可であり、5年生存率もかなり低いこともわかった。
その事実に気づいたとき、ものすごい恐怖が襲ってきた。
これから、どのように母に接していいのか、向き合ったらいいのかがわからなかった。

私がその時考えて出した結論は、
「母がどれくらい生きるかどうかは問題ではない。
母が自分の人生に納得し、幸せだと感じれるように、そして苦しまないようにサポートしよう。」
ということだった。
そして、母には真正面から向き合おうと思った。
なぜなら、一度逃げたら、さらに怖くなって、もっと逃げたくなると思ったから。

母は救急外来で入院した直後から、
腹膜炎を抑えるために抗生物質の点滴を受けていた。
それと同時に、腫瘍から出血して貧血になっていたから、鉄分の点滴も受けた。
減少したヘモグロビンで酸素を運ぶため、
心拍数も常時100を超える状態で、心電図もつけられていた。
でも、数日間で腹膜炎の症状は治まり、
お粥から食事も再開して、鉄分の点滴をうけながら、抗がん剤治療の開始を待つことになった。

1週間以上便通がなかったので、
医師が「腸閉塞を起こすと悪い」といって下剤を処方した。
これが大変だった。もう垂れ流しの状態で、オムツのお世話になった。
母は「下の世話までさせるようになった」としょぼくれていたけれど、
姉と私は「自分で処理できるんだから、自分ですればいいじゃん」と言ったら、
自尊心も戻ったらしく、以外に開き直ってオムツをしていた。

下剤の効果も通り過ぎたころ、無事抗がん剤治療が開始されることになった。
まずは、タキソテールだけの治療を開始した。
タキソテールを初めて点滴したとき、家族全員が緊張した。
母の手を姉と私で握りながら、点滴が終了するのを待った。
でも、タキソテールを溶かすためのアルコールで顔をあからめただけで、特に副作用もなかった。
次の日にはもう退院となり、外来での抗がん剤治療がスタートした。

姉と私は、「奏効率50%」のその50%に母が該当することを祈った。

1 件のコメント:

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