「ちゃんと検診していれば良かった」
と言っていた。
母は退職するまで、
約10年前に職場の検診で見つかった家族性ポリープ(良性)の経過観察もあり、
毎年必ず、胃カメラを飲んでいた。
でも、退職してからの数年間、胃カメラ検査をせず、簡単な検診で済ませていた。
その矢先に末期状態の胃がんが見つかったのだ。
母と家族とでそんな話を何度となくしたが、いたる結論はいつも
①過去のことを後悔しても、どうしようもない
②検診していたとしも、うまく見つかっていたとは限らない
③見つかってよかったんだ。でなければ、さらに悪化していた
というものだった。
私たち家族も、過去を振り返って、あの時気づいていればという回想をよくした。
①夏に母の体重が減った
②夏に登山したとき、「来年からは無理かも」と母がもらした
③夏に「お腹がぐにょぐにょする」と、母が訴えていた
といった様々な母の異変に、
無理やりにでも病院に連れて行けばよかったのではと。
その一方で、
夏に病院で検診したとして、結局、同じ病状だったのではないか、
または、手術はしてみたけれど同じ状態になったのではないか、
という話もした。
3月のある日、母と電話で話をした時、母はこう言った。
「過去を振り返ってもしょうがない。現実がかわるわけではない。
でも、将来について考えても、どうなるかわからない。
結局は、その時、その時を一生懸命に生きるしかないんだ。」
そう言いつつも、やっぱり後悔の念は消えてくれないものだった。